あけましておめでとうございます。
短評の順序入れ替えや返信をサボっていますが、まずは公開することを優先したいと思います。
お待たせしてすみません。
なお、解説は宮原航氏です!()
8位
soga 「マッハ=ツェンダーの干渉計」
72角生、53角合、54角成、34玉、35歩、同角、45と、同桂、23飛成、迄9手詰。評価 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
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正解:38(1) 誤解:0 無解:0 無評価:0
評点:
2.67順位予想 1位:2 2位:1 3位:3
ベストタイトル投票:5
にらめっこをしている54と55の歩が、いかにも65角と引いてくれと、そしていかにも成か不成かが大事だと訴えている。
まずは素直に成ってみよう。65角成に対し、適当に53香合とでもすると、54馬に34玉で全く詰まない。典型的な打ち歩詰めだ。
なーるほど、つまり不成でいけばいいのね、というわけで65の馬を引っくり返す。さっきと同様に53香合は54角、34玉に35歩、44玉、36桂で詰み。54角に44玉も36桂から24とがある。
これでめでたしめでたし、となるわけがないのである。
65角生には53角合が鋭い受け。54角、34玉、35歩に同角と取り返す手を用意しているのだ。そこで56とという好手もあるが、同桂、23飛成、44玉で惜しくも逃れ。しかしこの時、54の角が馬だったら詰んでいることに気づく。あっそうか、やっぱり初手は角成だったんだ…いや、それだと角合じゃなくて香合で詰まないんだった…あれ?
お気づきだろうか。そもそも65に角を引くのが間違いであることに。
54の歩を取れる角の位置はなにも65だけではない。そう、72だ。
そして72角生とすれば、玉方の合駒を見てから成か不成かを決めることができるじゃあないか!
この構図の素晴らしいところは、72に角を動かすと63合の変化が発生するため、直感的に72角を指しづらくしているところにある。実際は63合、同飛成、53合、54龍以下簡単なのだが、そこまで読む前にまずは65から考えてみよう、となる人間の心理を逆手に取っているのだ。
ただ機械的に構想を表現するだけでは、面白みを感じるのは難しい。
しかしこの作品は、解く過程で構想を理解するための紛れが備わっている。65角という第一感の紛れがあり、最初にそれを考えるからこそ、65と72の違い、72角生の意味を理解できるのである。
この点が実に素晴らしい。惚れ惚れした。
構想作はこうでありたいものである。
作者攻方が一旦態度を保留し、受方の合駒を見てから態度を決めるという構成になります。駒三十九氏作(『近将』1987.4)から、なんとなく酒井手筋と呼んでいるのですが、一般的には態度保留と呼ぶものでしょうか。
加えて、作意順(及び(2))の53角合は、54角生ルートでの35歩を取るための合駒なので、積極的意味付けの合駒(特にクリティカルポイントでの歩を取るための合駒)です。したがって、いわゆる真・森田手筋系の構想になっています。
創作のルートとしては、「『真』を作ろう」→「ピン外しの2手順を対比させよう」→「対比と言えば成生だろう」→「ピン外し諦めて酒井手筋にしよう」という感じです。
タイトルについて、マッハ=ツェンダー干渉計は、量子論の実験にも用いられる実験器具です。①干渉計の光の経路が、本作の角の経路(72~54と65~54)と似ている気がした&②成生が確定しない状態が、量子的な重ね合わせっぽく見えたことからこの命名にしました。(②は、第φ回の「神はサイコロを振らない」(すみしん氏作)と似たような感覚です)
完全版求ム。
★駒三十九氏作(『近将』1987.4)はこちらです。
近代将棋1987.4
駒三十九
tsumegaeru初手65角が第1感だが、成でも不成でもうまくいかない。そこで態度保留の72角だが、63合等の変化もあり指しにくい一手で素晴らしい。
本間瑞生初手がなかなか見えなかった。
有吉弘敏玉方応手打診のための不成は面白い。双玉である理由はよくわからなかった。
∇変化の為の不成。干渉計は調べたけどよく分からなかった。
ルモ角と馬の動きからこのタイトルなのでしょうね、光源は飛車?
keima82初手▲72角成は、平凡に△53桂等と合駒されて詰まない。そこで不成となる。今度は▲35歩が打てるのでそれを防止するために△53角の限定合ですが、▲35歩が禁じ手ではなくなったので、今度は54に角が成れる。AだからB、BだからCと言った具合に、最初の不成~角合~角成が理路整然と説明できるところがとても面白いと思いました。これは暗算で解きたかったですが、2手目△63の中合の変化に気を取られてなかなか正解に行き着きませんでしたw
竹中健一タイトルの意味が難しい。物理用語?
nono_y2手目合駒に応じて成不成を選択するための初手不成だが、それと合駒選択以外は消化試合のような手順では満足できない。
梶谷和宏54には成生両方の可能性を残しておかなければならないわけか。物理の世界のことは分りませんが、タイトルはよく理解できる気がする。
藤原俊雅合と成生の呼応。
竹野龍騎65角生から読む。打診かと閃くが、打診する駒が無く悩む。極上の解き味。素晴らしい。65より72の方が見え難いのがよい。開き王手による紛れと作意の対比を含む成生態度保留? 63中捨合の処理の巧み。試料光は72、参照光は65ということか。
青木裕一かっこよく言えば、態度保留の不成。タイトルはよくわからなかったのでググった……が、よくわからなかった。
山下誠角不成には角合で対抗する。この掛け合いが面白い。
上谷直希受方が自分から打歩詰を解除しにいくようにも見え、奇妙な感覚。
太刀岡甫玉方の合駒によって光路(角の成生)が分かれ、位相差(手数差)が生まれる。実際に観測されるのは、態度保留するだけで玉方が勝手に取歩駒を差し出す、という不思議な実験結果である。作者は園川さん。
原田椅子当初64角生にはまってその後成生を保留する構想だと気づいた。命名の意味は良くわからないが角の経路の違いを表現したのかな。面白い構想だ。これは久保先生。
springs9三飛(光源)が生み出した2枚の角が平行に動くこと(平行光)がタイトルの由来だろうか。9三飛を光とみなすと、8手目同桂の場合は飛車が3筋を透過し、一方同香の場合は透過しないと思えるので、3筋の4枚がハーフミラーっぽい気もした。
近藤郷72角だと63中合なので64角、が第一感だった。
雲 虚空焦点の中合を期待したが、呼び込むだけだった。
米澤歩登最初の二手過ぎるとあとは単調。大駒のどちらかを捨てられたらよかったのに。
虎野亜奈 65角成だと角合以外詰まない。65角生だと角合だけ詰まない。そこで態度保留の72角生という玄人好みの構想ですね。この作品のよくできているところは、第一感65に行きたくなるところですね。72角生は63に中合されるのが嫌な感じがしてやりにくいんですよね。
原田豪初手成るか成らないか…
まゆしぃ72角生が63に中合されそうでやりにくい。53の合駒によって成生が変わるのが面白い。
遍々羅一65角生からでは成れない.63歩の中合には54竜から清算すれば簡単だが,なぜか見えにくかった.
津久井初手65に角を動かしたくなるところ、態度保留の72角生がうまい。
まつきち初手72角不成、王手をかけていない駒の態度保留というのは新鮮。わざわざ取歩駒を発生させる53角合が最善というのも不思議。
奥鳥羽生態度保留の阿吽の応酬。
vvsd成生の決定を遅らせる初手おもしろい。
ほっと配置や駒取りは苦しいが、初手はインパクトあり。タイトルはよくわからず。
馬屋原剛最初は、65角生かと思ったが、34玉が変同になるので読み返したところ罠だと気づいた。72角生は中合がちらつくのでやりにくい手となっている。45との味よし。
三輪勝昭成不成を今決めるより後で決めた方が論理的には有利。
いくら構想が面白くても理由を考えなくても指せるのがこの構想の難点。
…なんだけど72角生は63の中合が見えて指せない。そこが巧く出来ている。
実際最初に読んだ手は65角不成から。
白木大輔解くのに時間がかかりました。
NZ2手目の合駒によって成生を使い分ける必要があるので初手は態度を保留
ミーナ65角成なら、打歩に、不成なら角合で逃れる。先に態度を決めさせる72角生。まさかこの構想が9手で割り切れるとは。
園川54には馬が到達するにもかかわらず、53角の存在によって我々は72に角があったことを検証できる、という(Vaidmanの)実験。
オオサキ「態度保留のために可成域の中しか動けない」というのは発展の余地がありそう。
いのてつ手順・命名ともに捉えどころのない作品。
相馬慎一後出しじゃんけんの構造は好み。
soga | 1 |
久保紀貴 | 5.5 |
園川 | 2 |
太刀岡甫 | 2 |
ミーナ | 1 |
ほっと | 1 |
梶谷和宏 | 1 |
青木裕一 | 0.5 |
予想的中は1/14。結構わかりやすいかと思っていたので、ちょっと意外な結果でした。