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くぼの詰将棋

ぼく(くぼ)の詰将棋ブログです

第5回裏短コン #7 「砂金の町」

不要不急の更新を避けていた……わけではなく、PCを買い替えたので環境構築など色々とやっておりました。
更新が遅くなってしまい申し訳ありません。


10位
奥鳥羽生 「砂金の町」

uratan05_07.png

77角、34玉、35香、同玉、27桂、同と、24龍、同玉、25金、迄9手詰。

評価012345678910
人数01135064744

正解:35(1) 誤解:3 無解:0 無評価:0
評点:2.61
順位予想 1位:1 2位:1 3位:2
ベストタイトル投票:2


遠打の人、奥鳥羽生さん。今年も遠打作品で登場だ。

43龍、55玉、54龍の筋を見て66角と退路を埋める手が見える。
これは取れないので、玉方は34玉と躱すしかない。

34玉には35香と玉を引っ張り出し、27桂と打つのがと金の守りを外す好手。
同とに24龍と捨てるのが決め手で、25金の頭金でフィニッシュ!

……とはならないのが本作の面白いところ。
こっそり控えている97の龍が曲者で、27桂には同龍と取られてしまうのだ。

そこで、これを解決する手段が初手77角!の限定遠打。
同玉には43龍、55玉、54龍、66玉、65龍、57玉、58金迄。埋める地点は66ではなく77でも構わないのだ。
14角の利きが光る好変化である。

77角が取れないとなれば、66角のとき同様34玉と躱すよりない。
35香、同玉、27桂。ここで77角がブロックしているため、同龍と取れないのが初手限定の効果だ。
以下同とに24龍と予定通りの決め手が出て、25金迄詰上がりとなる。

龍の利きに打つ距離感のある限定角を主眼に、全編捨駒の綺麗な手順で纏められた好作と思う。


作者
<作図経過>
①転回限定打を検討も9手でネタなし
②やむなく玉方線駒遮断限定打に決定
③けじめとして限定打駒は後に捨てたい
④限定打後捨て大駒4枚捨て駒を発想(図A)
⑤余詰と変化詰の兼ね合いでドンドン駒数増
⑥限定打後捨てをあきらめ全着手捨駒を検討
⑦同一ラインの他箇所は取り不可にしたい
⑧ブサイクな配置と駒数増がつきまとう(図B)
⑨配置を整理すると他箇所が取り可に(本図)
⑩せめて66地点だけでも取り不可に(図C)
⑪最後に気が変わり最小面積図に決定

★以下に参考A~D図を掲載します。コメントは原文ママ。

 図A(3手目からの局面も逆算不能)
uratan05_07_01.png

 図B(69と・79とが嫌味)
uratan05_07_02.png

 図C(やはり78とが不満)
uratan05_07_03.png

 図D(変化を広げるという案もあるが…)
uratan05_07_04.png

作者
重複感のある42との削除・退路空け~変化紛れ増のための46との削除、という意味で添付別図の方を選ぶべきだったと反省。こっちの方が裏短コンらしい若々しさ?があったが、奥鳥も年相応に年寄りじみてしまった。

tsumegaeru
強烈な初手が素晴らしい。

園川
取られる位置だが取られることはなく、逆に龍の横利きを遮断する不思議な角。

竹中健一
初手の限定打がうまいですね!

太刀岡甫
一閃の限定打。別経路のまとめ方も捨駒が多く、特に龍を捨てられたのがとても大きい。作者は奥鳥羽生さん。

原田椅子
初手に力がある。まとめも上々。

上谷直希
初手がなかなか見えなかった。

springs
そうか取れないのか!

竹野龍騎
初手が見えるまで。はじめから落ちている砂金を拾わないと分かる、ほど豊かな町ということか。

青木裕一
目が覚めるような限定打!取って何ともないように見えるが、取れば逃げ道が塞がって詰む。ただ、初手一発気味ではある。


龍を遮る角打ちが良い。

藤原俊雅
一瞬、66でも良いように見えた。

虎野亜奈
初手は66角の一手だと思ったが、不思議と詰まない。桂の使い所を考えると27に打つしかなさそうだが、龍が利きが強すぎる。これは…もしかして77角かも!と閃いた時のワクワク感たるや。2手目同龍の変化が9手駒余りで詰むことを確認して、期待が確信に変わる。収束も龍捨てが決まって大団円。いやー素晴らしい!はい、というわけで今回の個人的首位です。それでも10点を付けなかった理由は、初手を成立させるための配置と収束のための配置に連動性がないから。42と、64とは3手目以降不要なんですよね。この辺の配置が3手目以降も働いていれば10点付けてました。

soga
66角と打って「???」と思っていたら、77を塞いで詰む!

有吉弘敏
初手66角かと思った。と金で統一した配置は、もう少し構成含めて改善できそうな気がする。

keima82
駒を動かして、1時間くらいかかりました。当初から▲66角という手が見えていて、取れば詰むことはわかっていたのですが、逃げた時に竜の横効きがあって詰まない。他の初手も考えましたが詰まず。ダメもとで▲77角を試したところ、取ったら▲14角が効いてピッタリ詰むんですね。飛車の横効きさえ止まれば、先ほど▲66角でダメだった筋で今度こそ詰むのでめでたしめでたし。初手の▲77角が見えるかどうかが勝負でしたが、見えるまでに相当の時間を費やしました。お見事です。

nono_y
収束手順は一目で見えたが左辺の処理に悩み、▲99角▲88角▲66角全部読んでようやく▲77角に気付いた。角の遠い効きが変化で活かされる一石二鳥の配置も良い。

雲虚空
77を塞げば左辺に逃げられないというのはなかなか気付きにくい。

三輪勝昭
初手は一目66角だったので77角は意外。
僕だったら玉方の66の利きはない形にするから、逆に一目77角になっちゃうだろう。
最初の読みが66角、35玉なので34玉、35香は緩みに感じる。

まゆしぃ
66角から考えてしまうところだが、77角が成立しているのがすごい。以下の手順もきれい決まって文句なし。

梶谷和宏
一番時間かかりました。収束形は見えているのに、そこまでの手順が見えない。66と88からの角打ちは考えたがまさか77だったとは!

ミーナ
66角と思わせ、一間遠い77角。できてはいるが、物足りないのは、動きがちいさいからかな。

NZ
ひと目66角と打ちたくなる形ですが、27桂を龍で取られて失敗。2手目同龍の変化で14角が輝いてますね。

いのてつ
初手に同龍の変化処理が的確。

★2手目同龍の変化で14角の足の長さが活きているのが好感触です。

白木大輔
上手。77角が見えなかった。

遍々羅一
77角を発見したときの嬉しさ。

津久井
初手77角の味が良いですね。

まつきち
初手77角の限定打がインパクトあり!以下も捨駒の連続でGood!

★66角に見えるところ、一路離して打つ角は解答者に大きなインパクトを与えたようです。
★表現は大成功だったと見てよいのではないでしょうか。

オオサキ
収束で77角も捨ててほしい。

ほっと
お馴染みのアレ。打った角は捌き捨ててほしかったが。

★作者も最初は捨てるつもりだったようですが、その後色々な構図を考えられた結果が本図ということのようです。

近藤郷
指手に隙は無いしストーリーも一貫している。

ルモ
盤面はと金+大駒だけと拘りを感じます、限定捨ての続く高度な作品、あとは好みかどうか。

原田豪
初形も手順もいいですね。

本間瑞生
と金がたくさんあって頭がクラクラ。

山下誠
と金が目にちらついて3五香が見えにくい。

馬屋原剛
34玉とよろけるのが意外だった。

★実戦なら35玉と上がってしまいそうですね(笑)


奥鳥羽生7
竹野龍騎2
1
ルモ1
有吉弘敏1
上谷直希1
久保紀貴1
近藤郷1

予想的中は7/15。やはり遠打と言えばこの方ですね。
[ 2020/03/30 21:00 ] 発表作 | TB(0) | CM(0)

第5回裏短コン #6

今日は優勝作の登場です!


優勝
tsumegaeru

uratan05_06.png

58香、57金合、56香、同金、55香、同金、54香、同金、43金、迄9手詰。

評価012345678910
人数000222349412

正解:38(1) 誤解:0 無解:0 無評価:0
評点:2.77
順位予想 1位:6 2位:7 3位:4
ベストタイトル投票:-


接戦を制し、見事優勝に輝いたのが本作。
9手詰として、一つ理想と言える手順を実現している。

25のと金が馬に睨まれて動けない(=ピンされている)ので、まずは58香と打ってみるところ。
あとは55さえ埋まれば54香~35とで詰ますことができる。

ここで合駒の位置に絞って(仮に歩合として)考えてみると、
  • 54合は43金
  • 55合は54香、45玉、35と
  • 56合は55香、45玉、46金!、同玉、54馬
  • 57合は56香、45玉(※54合や55合は上記変化に合流)、35と
と、全ての変化で合駒の真後ろに香を打つ必要があることに気付く。

そこでこの香打を取るため、2手目は57金合!の中合が飛び出すのだ。
これは取ってしまうと55合、54香、45玉で35とができず逃れるので、やはり56香と合駒の真後ろに香を打っていくしかない。

しかし同金と取られた局面は、56金合とした局面と同じ。
以下同様に合駒の真後ろに香を打っていけば、上に列挙した変化を逆順で辿っていけることになる。

以上の理屈から攻方は金の真後ろに香打を繰り返し、玉方は全て同金で応じる。
その結果、57金中合に対してこれを3連続で動かす手順(=3連続ペレ)が成立するのだ!
もちろん、9手詰で合駒を3回動かすのは、理論上の上限値である。

実は私も今回裏短コン用の作品を用意するにあたって同様の手順を夢想したのだが、距離のある金中合というのは存外実現の難しいもので、諦めてしまった。
本作では14馬、25と、69王の配置がコロンブスの卵で、スマートに夢の手順を実現していると思う。
優勝おめでとうございます!!!


作者
中合を3回動かすのが狙いです。飛合と桂合は、どうにも割り切りにくかったので、止むを得ず品切れにしました。

★桂合があると2手目57桂合が逆王手。合駒制限は確かにやや苦しくも感じますが、この作者が言うのだから難しいのでしょう。

竹野龍騎
金合を引いていく、のが見えた瞬間の衝撃。素晴らしい。

原田豪
素晴らしい!感動しました。

springs
まさかと思ったらそのまさかだった。裏短コンらしい作品。

米澤歩登
よくこの手順が再現できたと感心させられる。

keima82
暗算では解けず、駒を動かして10分くらいでした。これは「どうやったら詰む」ではなく「どうしたら詰まない(9手まで伸びる)か」という問題。馬が14にいることから初手は▲58香はすぐ見え、中合いに対しては取ったら詰まない…というよりは、取ると9手では絶対に駒が余るので再度香打ちしかない…と考え、あとはこちらの王手と相手の合駒をしらみつぶしに確
認して正解にたどり着きました。合駒で出した金をすぐ取らずに、3回香を食わせるという素晴らしい趣向。僕自身も香の3連続捨てはスマパラで投稿予定なのですが、それよりもはるかに良い作品で、負けた感が強いです。9手と分かっているので読む気は起きませんでしたが、紛れもまじめに読むと結構きわどいですね。▲57同香△55歩▲同香△43玉▲54馬△33玉▲24金△22玉(△同馬と△42玉は詰み筋)▲23歩△同馬…。上手くできていますねえ。

雲虚空
合駒制限の配置は多少気になるが、中合の金を3回動かす手順は秀逸。

NZ
中合の金を吊り上げて退路封鎖、感動しました。

青木裕一
合駒で発生させた金の裏に香3連打とはすごい。意外とシンプルな理屈で高度な手順。

山下誠
5筋に4連続香打は凄いの一言。アイデアの勝利。

soga
ぱっと見、香連打のはずなのに取香駒が見当たらない・・・と思ったら、忽然と出現した。高度。

太刀岡甫
やられた。この金が中合で出せるなんて。参りました。作者はtsumegaeruさん。

★参りつつも、作者は当てていく(笑)

馬屋原剛
9手詰でペレの最高回数は3回だと、以前シナトラ君と話したが、本当に実現してくるとは。一族の誰かかな。

藤原俊雅
私の知る限りでは、7手でPelle2回を実現した作品は過去に2作のみ。9手で3回動かすのは夢物語だと思っていたため、本作には良い意味でショックを受けた。

まゆしぃ
香の4連打が素晴らしい。品切れ2種類にせざるを得なかったのは惜しい。

遍々羅一
9手で不動玉に4香を当てるのは見事。

奥鳥羽生
ちょっと変わった四香連打。

★4香を連打するだけなら

ほっと
ペレのハットトリック!この持駒なら解くのは一瞬だが、裏短コンにふさわしい作。ちなみに4香連捨てにした作品があった。パラ2017.10中学校 三輪勝昭9手。

 詰将棋パラダイス2017.10
 三輪勝昭

uratan05_06_01.png

★の作例があります(他にあれば教えて下さい)が、

ミーナ
4香連打はあるかなとおもったけど、これは夢の世界か。初手も限定されている。魔法。

nono_y
逆王手回避の限定香打に限定中合、それを動かして退路封鎖する香三連打。強い意志が感じられる手順は気持ち良い。

★と、中合金に香を取らせる手順が本作の特徴です。


中合の金がよく働く。

本間瑞生
金の動きがおもしろい。

まつきち
中合の翻弄。持駒で予想されるとはいえお見事!変化の45金にも好感。(25とを成桂にするのは不都合あり?)

原田椅子
難しくはないが独創の香りを評価した。

相馬慎一
狙いが明快でgood!

津久井
狙いが明快に表現されている。お見事。

vvsd
狙いが一貫していてよい。

園川
こういった趣向的なものは凄く好み。

白木大輔
楽しめました。

オオサキ
上手。

ルモ
9手詰で持駒5枚の異色作、成桂配置や双玉は評価で損してる印象、香4連打が気持ち良い。

竹中健一
桂の品切れがちょっとだけマイナスでしたが作意はいいですね!

梶谷和宏
配置に苦労されたことが分かります。51成桂を違う形で表現できないか、すごく考えられたのではないでしょうか。

いのてつ
合駒制限が惜しい。

近藤郷
よく成立させた、という評が多そうだけど……。

★合駒制限の配置の苦しさだけが玉に瑕ですか。しかし、

虎野亜奈
これは凄いですね。この手順は自分も考えたことあるけど実現できなかった。かなり創作難易度高いはず。次は単玉での実現に期待したいです。

★一度作ろうと考えてみると、むしろよくこれだけの枚数でやったなと。
★単玉での実現も見てみたいですが、4連続香捨ての11手詰も見てみたいですね。

有吉弘敏
先行作との類似性が強すぎる。双玉も初手の限定の意味? ほかの論理的な意味づけはできないか。

★双玉は中合の意味づけにもなっています。
★先行作とは恐らく

上谷直希
山路大輔氏短コンの9手ver。配置に大きな犠牲を伴うものの、香4の持駒にまで発展できたのは大きい。中合の意味付けは敵玉から遠いほど難しくなる(特に超短編では)ので、致し方ない面も多いのだと推察する。意欲的な作品。

 詰将棋パラダイス2015.12
 山路大輔

uratan05_06_02.png

★のことでしょう。プラス2手に過ぎないという指摘はもっともです。
★ただ私は上谷さんと同じで、このプラス2手の価値は大きいと見ました。

★ちなみにこの山路さんの作品を初めて見たのはとり研でした。
★当時小学校に投稿中だった自作(下図)は中合を妥協してしまった図なのですが、山路さんの作品を見てこんなに綺麗に金中合が出せるのかと驚いたものです。

 詰将棋パラダイス2016.1
 久保紀貴

uratan05_06_03.png

★しかし一応言い訳をしておくと、最後の応手はどうしても同金に限定したかったのでこうなっています。
★その点、tsumegaeru作は最後が同金に限定されているのも素晴らしいですね。

三輪勝昭
このタイプの香連打は山路大輔作(確か短編コンクール)で3・4手目がない合駒2回移動と、僕の2手目が同とになる作品(中学校)がある。
要はそれらと7手以降は同じ原理でそこからちょっと工夫すれば出来そうだが、実は簡単でない。
多分単玉では無理だろう。
6手目44玉は56が埋まっている意味付けを考えると45金、同玉、54馬の変化しかない形。
それは46玉が出来ない形にする必要がある。
46壁の形は58香が詰み57香が詰まない形にするのはほとんど無理。
この理由で僕は単玉で9手合駒3回移動は無理だとの結論。
合駒3回移動最短手数記録作として価値がある作品にはなるだろう。

★単玉で本当に不可能かはわかりませんが、いずれにしても本作は詰将棋史に残る作品だと断言しておきます。


tsumegaeru9
雲虚空1
青木裕一1
太刀岡甫1

予想的中数も9/12で現状トップ!驚愕の手順を論理的に組み立てる作風が滲み出たゆえでしょうか。
私もこの表に名前を連ねたかったなあ(笑)
[ 2020/03/09 21:30 ] 第5回裏短コン | TB(0) | CM(2)
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Author:くぼ
とある詰将棋作家

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