A 55角、同歩、35角、イ 同飛、36桂、同飛、55金、43玉、35桂打、ロ 同飛、同桂、同香、45飛、44桂、同飛、同銀、54金、33玉、45桂、同銀、34歩、同銀、32銀成、迄23手詰A 35角、同香、55角、43玉、35桂、同飛、44香、33玉、以下逃れ
イ 同香は55金、43玉、35桂、同飛、44香、同銀、54金、33玉、34歩、同飛、32銀成、迄
ロ 同香は同桂、同飛、44香、同銀、54金、33玉、34歩、同飛、32銀成、迄
誤0 無2 正27
序は手順前後(紛れ
A)さえ気をつければこれしかない。
岐路は10手目。35桂打に対して、同香と同飛の二択があるが、果たしてどちらが正解だろうか。
いずれにしても同桂で攻方に取られることになるので、普通は香で取るところだろう。
しかし同香には同桂~44香~54金と進めて、33玉に34歩が打てて詰んでしまう。(変化
ロ)
そこで10手目は35同飛と飛で取るのが正着。
以下先ほどのように同桂~44飛~54金と進めると、33玉に34歩が打歩詰になるのがその効果だ。
すなわち、玉方は10手目35同飛と敢えて飛を渡して香を残し、34に利きを生じないようにするのである。
ところが以下同桂、同香と進んで、今度は35が香であるために45に利きがなくなっている。
これにより攻方に45飛を許し、桂合を稼がれてしまうのがアイロニカル。
後は54金、33玉にその桂を用いて45桂、同銀と34地点の打歩詰を解消し、34歩、同銀、32銀成、迄予定調和的に詰め上がる。
本作の狙いは勿論10手目の「置駒による飛先飛香玉方応用」。
飛先飛香玉方応用は通常「敢えて飛を渡す」ことでその過剰な利きによって打歩詰に誘致する。すなわち「攻方にどちらを渡すか」という選択が重要になるわけだ。
しかし本作では「敢えて香を残す」ことでその不足な利きによって打歩詰に誘致する。すなわち「玉方がどちらを残すか」という選択が重要となるのである。
第一号局であるかどうかは自信が無いが、少なくとも目新しさはあるはず。
この構想の原点は「なぜわざわざ置駒で飛先飛香玉方応用をやるのか」という批判だった。
「通常の飛先飛香玉方応用を置駒で表現したからと言って、そこに本質的な差などない。それどころか精算を前提としてしまう上、
飛を渡した局面と香を渡した局面とは微妙に異なっているのは、表現上の劣化ではないのか」というのがその要点である。
しかししばらくして「飛を渡した局面と香を渡した局面とは微妙に異なっている」ということはむしろ積極的に利用できるのではないかと気付けたのは僥倖だった。
この点によって「同飛」と「同香」の差別化を試みたのが本作で、これは置駒によってしかできない。これであれば通常の飛先飛香とは本質的に異なるし、置駒でやる意義も明らかだと思う。
また、纏めはかなり気に入っている。
飛先飛香玉方応用によって生じた45の隙が逆用されてしまうという皮肉、そして結局34の打歩詰が解消されて詰むという予定調和が私の美的感覚に合っていて、個人的にはこれ以上ないとさえ感じる。
一方で序は66
とを追加しなければ成立しなかったのがちょっと惜しい。とはいえ悪い手順ではないと思う。
尚、変化
イは変化
ロと似ているが、6手目の同飛は55に飛を利かしておくためで飛先飛香とは関係がない。念のため。
普通の飛先飛香玉方応用との違いを感じ取ってもらえるかは少し不安だったが、結果稿ではわかりやすい解説と次のような作者冥利に尽きる短評があってありがたかった。
永○勝利 「一種の飛先飛香ですが、こんな表現もあるんですね。」