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くぼの詰将棋

ぼく(くぼ)の詰将棋ブログです

詰将棋パラダイス 2014.7 デパ②

015.jpg


A 55角、同歩、35角、 同飛、36桂、同飛、55金、43玉、35桂打、 同飛、同桂、同香、45飛、44桂、同飛、同銀、54金、33玉、45桂、同銀、34歩、同銀、32銀成、迄23手詰


A 35角、同香、55角、43玉、35桂、同飛、44香、33玉、以下逃れ

同香は55金、43玉、35桂、同飛、44香、同銀、54金、33玉、34歩、同飛、32銀成、迄
同香は同桂、同飛、44香、同銀、54金、33玉、34歩、同飛、32銀成、迄


誤0 無2 正27



序は手順前後(紛れA)さえ気をつければこれしかない。
岐路は10手目。35桂打に対して、同香と同飛の二択があるが、果たしてどちらが正解だろうか。

いずれにしても同桂で攻方に取られることになるので、普通は香で取るところだろう。
しかし同香には同桂~44香~54金と進めて、33玉に34歩が打てて詰んでしまう。(変化

そこで10手目は35同飛と飛で取るのが正着。
以下先ほどのように同桂~44飛~54金と進めると、33玉に34歩が打歩詰になるのがその効果だ。
すなわち、玉方は10手目35同飛と敢えて飛を渡して香を残し、34に利きを生じないようにするのである。

ところが以下同桂、同香と進んで、今度は35が香であるために45に利きがなくなっている。
これにより攻方に45飛を許し、桂合を稼がれてしまうのがアイロニカル。
後は54金、33玉にその桂を用いて45桂、同銀と34地点の打歩詰を解消し、34歩、同銀、32銀成、迄予定調和的に詰め上がる。


本作の狙いは勿論10手目の「置駒による飛先飛香玉方応用」。
飛先飛香玉方応用は通常「敢えて飛を渡す」ことでその過剰な利きによって打歩詰に誘致する。すなわち「攻方にどちらを渡すか」という選択が重要になるわけだ。
しかし本作では「敢えて香を残す」ことでその不足な利きによって打歩詰に誘致する。すなわち「玉方がどちらを残すか」という選択が重要となるのである。
第一号局であるかどうかは自信が無いが、少なくとも目新しさはあるはず。

この構想の原点は「なぜわざわざ置駒で飛先飛香玉方応用をやるのか」という批判だった。
「通常の飛先飛香玉方応用を置駒で表現したからと言って、そこに本質的な差などない。それどころか精算を前提としてしまう上、飛を渡した局面と香を渡した局面とは微妙に異なっているのは、表現上の劣化ではないのか」というのがその要点である。
しかししばらくして「飛を渡した局面と香を渡した局面とは微妙に異なっている」ということはむしろ積極的に利用できるのではないかと気付けたのは僥倖だった。
この点によって「同飛」と「同香」の差別化を試みたのが本作で、これは置駒によってしかできない。これであれば通常の飛先飛香とは本質的に異なるし、置駒でやる意義も明らかだと思う。

また、纏めはかなり気に入っている。
飛先飛香玉方応用によって生じた45の隙が逆用されてしまうという皮肉、そして結局34の打歩詰が解消されて詰むという予定調和が私の美的感覚に合っていて、個人的にはこれ以上ないとさえ感じる。

一方で序は66を追加しなければ成立しなかったのがちょっと惜しい。とはいえ悪い手順ではないと思う。
尚、変化は変化と似ているが、6手目の同飛は55に飛を利かしておくためで飛先飛香とは関係がない。念のため。


普通の飛先飛香玉方応用との違いを感じ取ってもらえるかは少し不安だったが、結果稿ではわかりやすい解説と次のような作者冥利に尽きる短評があってありがたかった。

永○勝利 「一種の飛先飛香ですが、こんな表現もあるんですね。」

[ 2014/12/12 05:00 ] 発表作 | TB(0) | CM(5)

握り詰大会 on Twitter ⑪



黄楊の輝き 作

A 34飛、23玉、36飛、 34歩、同角、24玉、25歩、15玉、26金、14玉、15歩、13玉、12角成、同香、33飛成、23飛、14歩、同玉、23龍、同玉、24飛、13玉、22龍、14玉、24龍、迄25手詰

A 36飛は35歩、同飛、24玉、以下逃れ
24玉は25歩、15玉、26金、14玉、34飛、13玉、33飛成、23桂、22龍、14玉、23角成、同角、11龍、12歩、15香、迄

正12 誤 0 無 0
評点 3.58 ( 5*2 / 4*3 / 3*7 / 2*0 / 1*0 )
順位 7位


トリを飾るのは黄楊の輝きさんの流麗な中編詰将棋。
36飛の限定移動に対する34歩合で華々しく幕を開けます。
特に34歩合は6手後の34飛を防ぐちょっとした遅効手でもあり、深みのある一手。

以下は特別な手こそありませんが、きっちり纏まっています。
収束について作者は、

作者
中だるみに駒取りの5手収束と、未完成ですが、序の4手を入れるために崩れてしまいました。


と謙遜していますが、限定飛合から14歩捨ての小技が効いていて悪い収束ではないと思います。
25歩以下の数手の中だるみについては改善の余地があるかもしれません。
しかし全体的には美しい手の流れを感じられる作品になっているのではないでしょうか。

ところで本作、作者の言及はありませんでしたが面白い構造を持っています。
初手から34飛~36飛とするのは、結局36に飛を据えることが目的でした。しかしそれでは、初手から36飛としてはいけないのでしょうか。
対して24玉であれば目的が達成され、変化と同様に詰むのですが、ここで35歩合という妙防があります。同飛、24玉でこれは詰みません。
つまり、攻方は36に飛を据えたいところ、いきなり36飛といくと35歩合があるので、これを回避するために34飛~36飛と迂回する必要があるのです!

この部分を強調するなら、作意は4手目34歩ではなく24玉の方に設定すべきですが、ともかく面白い構造には違いありません。
最後に同じ構造を持った作品を一作紹介しておきます。


詰パラ1985.12 短編競作展 愛上夫作 (森長宏明 『詰物語』 7番)

初手から33飛とすると34歩の打診中合があるので、これを避けるために38飛~33飛生とするのが主眼。
短編競作展にて首位を獲得した傑作です。
「結果発表では解答者107名中53名が9手詰の誤解に陥った。しかも成績の方でも第一位に輝いた。このような渋い構想作が高い評価を得たのは望外の喜びだった」(『詰物語』より)

追記
初手36飛はなんと43玉!で逃れてました。
極めて普通の手なのになぜ見落としたのか……。
これでほとんどこの構造のことに言及がなかった謎が解けました(笑)



咲花
変化も紛れも作意も、ほどほどに良い感じ 中合と歩突きの感触もいいね

占魚亭
飛の動きがテーマかな?

たちおか
単に遠打ではなく短打→限定移動となるのが面白く、歩捨合や飛合を絡めてうまくまとめています。

☆構造の面白さに言及した評。全く同意見です。

VAN
歩の使い方が丁寧。

桃燈
そっぽ飛車に捨て合といきなり密度の濃い攻防。
収束も先に歩を突くなど細かい攻防が好印象。

河童 B
作者曰く、「飛の大活躍を楽しんで下さい。」、ですね。
4手目の歩の捨て合が妙応手。

彼方
あらかじめ34に歩を中合して数手後の34飛を防ぐ。

☆34歩合はちょっとした遅効手になっています。

divD
攻防のバランスが良い。

☆攻防両方にバランス良く好手がありますね。

そてつ
パズル的問題。


黄楊の輝き作品の美点は、いかにもな詰将棋らしさとバランスの良さ、そつの無さだと思っています。
ウルトラCはなくとも、納得できる作品が多い印象です。ニコニコ動画風に言うと、実家のような安心感(笑)
でももう少し野心を覗かせた作品もたまには見たい気がします。なんせそういう作品の方が好みなので(わがまま)


以上で握り詰作品展11作の解説は全て終了です。
次代を担うであろう作家が集まってくれて、解説する側としては楽しかったです。
次回は……あるかな?やるとしたらテーマ競作がいいなあ。
[ 2014/12/05 18:30 ] 握り詰大会 | TB(0) | CM(0)

握り詰大会 on Twitter ⑩



divD 作

48銀、36玉、37金、35玉、36金、同玉、37歩、35玉、36歩、同玉、59飛、 47歩成、同角、35玉、36歩、46玉、56飛、迄17手詰

69馬は39飛、迄

正12 誤 0 無 0
評点 3.92 ( 5*5 / 4*3 / 3*2 / 2*2 / 1*0 )
順位 5位


無理のない初形に無理のない手順。余り頭を悩ませるところはなかったように思います。
それだけに嫌味なく、しかしそれでいて38歩消去や59飛~47歩成などところどころに香辛料が効いた手順。
非常にいい雰囲気を持った作品で、個人的には今回一番好きな作品でした。
また、順位は5位ですが首位との点差は僅か2点で、さらに5点評を最も多く集めたのは本作でした。私の感覚も捨てたもんじゃないな(笑)

尚、作者の狙いは…

作者
13手詰の誤解狙い。


というところにありました。引っかかった人はいませんでしたが、47歩成に結構な短評が集まったこともあり、まずは成功でしょう。
しかし主題としては少し弱い気がします。

尤も、強い主題があることは長所ですが、主題がなくとも纏まりを生むことはできます。
本作のように雰囲気を統一して手順を繋げることができれば、趣向作が趣向部分を主張するように、その雰囲気を主張できるはずです。(雰囲気の感じ方は人それぞれなので、事はそう単純ではありませんが)
手順の弱さをカムフラージュするためなのか、雰囲気を壊してまで難解な序をつけたような作品がたまにありますが、私は嫌いですね。
と、話が本作からどんどん逸れていってしまっているので、この辺りで自重します。
とにかく本作は好作、というのが主意。


咲花
なんとなく嫌いになれないこの雰囲気 移動合も軽いポイント

☆そうそう、やっぱり咲花君はわかってるね!(笑)

占魚亭
溜めて、溜めて、59飛。間違いなく1位はこの作品でしょう。

☆1位ではありませんでしたが、私の中では1位でした。

たちおか
飛を下に引いて使い、玉方は移動捨合で対抗するのが面白い。易しくて楽しめました。

VAN
邪魔駒削除の構想作。面白い。

☆面白いと好評サクサク。

桃燈
金と歩を捨てる手順は、こうなって欲しいという形のまま、非常に綺麗に入っている。
59飛のそっぽも自然に入っており、握り詰とは思えない無理のない構図に思う。

☆無理のない構図も一つのポイント。

河童 B
48歩が邪魔駒とはね。47歩成の移動合も面白い。
好形の握り詰、これはお気に入りです。

☆実力解答者もお気に入り。

彼方
狙いは面白いが収束に少し冗長感がある。

黄楊の輝き
解いていて楽しかった。変化がスッキリ纏まっていますね。かなり好みです。
咲花さんかな。

☆作者当て……もはや何も言うまい。(冬眠蛙さんのパクリ)

そてつ
わかりやすい邪魔駒消去。



divDさんは私が今最も注目している作家に一人。
スマホ詰パラでは既に入選級の好作をいくつも発表されています。
本誌へは投稿しないのですかと何度も訊いてしまってすいません(笑)
[ 2014/12/01 20:58 ] 握り詰大会 | TB(0) | CM(1)
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