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相馬慎一作品展② 解説 [2014/08/30]
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相馬慎一作品展② 解説
A
82角生、
イ
73香合、
B
同角右生、
ロ
64香合、
C
同角成、26玉、27香、16玉、17香、同玉、28馬、16玉、17馬、同玉、28角生、
ハ
16玉、17歩、27玉、73角成、17玉、28馬、
ニ
16玉、27馬、25玉、34龍、迄
A
82角成は作意15手目28角生ができない
B
同角左成、48玉、84馬、49玉、85馬、39玉、以下逃れ
B
同角右成、26玉、71角成、53香、同馬、同桂、27香、16玉、17香、同玉、28馬、16玉、にて打歩詰
C
同角生、26玉、27香、同玉、28香、17玉、以下逃れ
イ
48玉、84角成(93角成でも詰む)、49玉、85馬、39玉、
28角成
、迄
イ
73歩合、同角右成、26玉、71角成、53香(歩)、同馬、同桂、
27歩
、16玉、17香(歩)、同玉、28馬、16玉、17歩、25玉、34龍、迄
ロ
26玉、71角成、53香、同馬、同桂、27香、16玉、17香、同玉、
28角生
、16玉、17歩、27玉、73角成、17玉、28馬、16玉、27馬、25玉、34龍、迄2手早い。
ハ
27玉、73角成、16玉、17歩、同玉、28馬で作意に合流。尾岐れ。
ニ
26玉、38馬、17玉、27馬、迄駒余り。
初手は82角の一手。成か生かは選択の余地があるが、必要があれば後で裏返すことにしてとりあえず成っておこう。
対して27玉には28馬~17馬、48玉には84角成でも93馬でも簡単。
そこで73歩合とするのが玉方の妙防だ。
これを82の馬で取ると48玉に対して84角成や93馬がない。(84馬では変化
イ
48玉の最終手28角成ができない。)
なので攻方は同角と62の角で取るしかない。ここも成生選択の余地があるが、上と同様にまずは成っておく。
以下26玉に71馬と合駒請求するのが好手で、此方の馬はもう19~91ラインにいても使い道がないので、何か持駒と換えようというわけだ。
対して普通に53歩合とするとY図。
ここから同馬、同桂で予定通り馬を持駒の歩と換え、27歩と打てば何のことはない詰み形である。
27歩、16玉、17歩、同玉、28馬、16玉、
17歩
、25玉、34龍、迄。
しかしこの作者の作品にしてこれが作意ということはありえないはず。一体何を間違えたのだろうか。
実は上記手順中、
17歩
が本作の鍵。
上では17歩と打てたから詰んだわけで、もしこれが打歩詰であったならばこの順は逃れだ!
テーマ図は17歩と打つ直前の局面。ここで
攻方は17歩と打てれば詰み、玉方は17歩を打歩詰にして打たせなければ逃れ
これが本作の設定なのである。
それでは17歩を打歩詰にするために玉方はどう工夫するのだろうか。
テーマ図で17歩が打歩詰であるためには、25に攻方の利きがあればよい。
そのためには……もうお気づきだろうか。そう、27の歩が香車であればよいのだ。
もしこの27の歩が香車であれば、テーマ図からの
17歩
は紛れもなく打歩詰となり、設定に従ってこの局面は逃れということになるわけである。
27の歩を香に変える方法はこの作者の作品ではもうお馴染みだろう。不利合駒だ。
そこでY図で53香合としたのが次のY'図
ところがここから53同馬、同桂、
27香
、16玉、17歩、同玉、28馬、16玉、と進み見事に打歩詰……とはいかないのが本作の奥深いところ。
上記手順で攻方はわざわざ27に香を打ってやる必要はない。27香のところ27歩とすれば以下、16玉、17香、同玉、28馬、16玉、17歩、25玉、34龍で不利合駒の甲斐もなく詰んでしまうのだ。
かといって飛合に変えてみても意味がないどころか詰みすぎるし……。暫く堂々巡りに陥った解者もいたかもしれない。
この謎を解くには、さらに局面を遡らなければならない。
実はX図では73香合!と不利合駒をしておくのが玉方唯一の妙防手!
すぐには意味がわからないだろうが、とにかく手順を進めてみよう。
73香合以下、同角成、26玉、71馬に再度53香合!と不利合駒。
ここから53同馬、同桂とすると……
持駒が香香なので攻方は27香と打たざるを得ない!
27香、16玉、17香、同玉、28馬、16玉、で17歩は打歩詰だ。
すなわちX'図とY''図でいずれも香を不利合駒したのは、攻方に香しか渡さないことで27に香を打つ以外の選択肢を与えない意味だったのである!
この「1枚でも安い駒を渡すと攻方に都合のいいタイミングでそれを使われてしまうので、複数回の合駒を全て不利合駒で受けて安い駒を渡さないようにする」というのは
私の知る限り
若島正氏の詰パラ大学院発表作(詰将棋パラダイス 2014.1 院1)
が初出。
が記憶に新しい。(修正について詳しくは追記で)
6~8手目に連続で飛合をしているのがそれ。
もし共に歩合であれば9手目から65同銀、55玉、56歩、45玉、46歩、同と、同銀、36玉、
37歩
、以下。
このとき56の歩が飛であれば37歩は打歩詰なのだが、例えば8手目だけ飛合をしても65同銀、55玉、56歩、45玉、46飛、と敢えて飛の方を捨てることで上と全く同一の局面に合流してしまう。
56に飛を打たせるためには攻方に飛以外を渡してはならないのだ。
そのため、6~8手目はいずれも飛合をするのが最善になっているのである。
この仕組みは打歩詰誘致に実際には関わってこない駒(本作でいう17香、若島作でいう46飛)も不利合駒しておく必要があるというのがこれまでと全く違う点であり、
一部では勝手に若島理論と呼んだりしている。
今後なんて呼ぼう……。
最近現れたばかりでまだ馴染みがない人が多いのではないかと思い紹介させていただいた次第。
さて、話を本作に戻そう。
P図となって攻方は打歩詰を逃れられない。ようやく攻方が工夫する番が回ってきたようだ。
攻方はここで初めて73の馬を裏返す、いや表返すことになる。
X'図の73香合に対して、攻方は同角
生
としなければならなかった!
以下26玉、71馬、53香、同馬、同桂、27香、16玉、17香、同玉、28角生!、16玉、17歩、となれば後は簡単な詰み。
73同角生~28角生としたことで27への攻方の利きが消え、17歩が打歩詰ではなくなっているのだ。
連続不利香合の妙防を角生で切り返して詰み。なるほど虚々実々の応酬であった。
めでたしめでたし……
とはいかない!本作はここからが佳境である。
秘術を尽くした連続不利香合は、角生で切り返されてしまった。
さらにその上をいくような秘手とは――
Q図から64香合!とするのが玉方最後の秘手。
あくまで同角生と生にこだわれば、26玉、27香に同玉として逃れ。
同角生としたことで28角成とできなくなっているのだ。
では同角成だと?26玉でR図。
ここで71馬とするのは意味がない。53合を同馬と取れない(同飛とされて逆王手)からだ。
しかし64で合駒を得ているのだからもう合駒を稼ぐ必要はない。むしろ82に馬が残って攻方が得したようにも思えるのだが……。
R図以下、27香、16玉、17香、同玉、28馬、16玉。
前にもみた打歩詰の局面になってしまった。64香合に
同角成としたことで28角生とできなくなっているのである。
すなわち
Z図の64香合は角に成生の態度決定を強制し、28角成か28角生のいずれかの選択肢を奪う打診不利中合
だったのだ!
尚、64香合には93飛車の横利きを通して71馬から53合を稼げなくする意味もないとは言えないが、合駒を稼がせないために64で合駒を渡すのでは意味がないはず。その上82馬が残ってしまうのでは玉方にとってむしろ損なはずで、であれば64香合とするのはひとえに角の成生を打診するためのものだと言える。
ところでこの打診不利中合という構想は、他でもない本作の作者が昨年末に
81puzzler
で発表した作品が一号局。
それでは本作はそこからどういう発展を遂げているのだろうか。
X'図は73香合とした局面。ここで同角成は26玉以下打歩詰で逃れるのであった。
そして実は作者の主張によれば、成って取ると詰まないということはこれも打診合なのだ。
かなり広義に打診合を定義すれば、成って取ると詰まないような合駒を打診合と言うこともできる……のだろうか。
26玉と逃げるための合駒に見えることもあって、正直疑問符がつくところではあるが……。
このあたりは解答者の方の意見も聞いてみたいところ。
ともかく、作者が言うにはこの73香合は打診不利合。
そして直後の64香合は先ほど述べたように紛れもなく打診不利合。
これらを併せて「
打診不利連合
」というのが本作の構想なのだ!
打診不利連合によって攻方は再び打歩詰の局面へと導かれてしまう。
初手から、82角生、73香合!、同角生、64香合!、同角成、26玉、27香、16玉、17香、同玉、28馬、16玉。
ここで17歩は打歩詰。
とはいえここで諦めるのはありえない。今こそ攻方最後の切り札を使おう。
82馬を表返すのだ!
82の馬が角ならばS図から17馬、同玉、28角生!と28馬を角にすり替え、16玉に17歩と打てる。
つまりここに至ってはじめて、初手は82角生と指しておかなければならなかったことが判明するのである!
82角生!、73香合!、同角右生!、64香合!、同角成、26玉、27香、16玉、17香、同玉、28馬、16玉、17馬、同玉、28角生、16玉、17歩、27玉、73角成、17玉、28馬、16玉、27馬、25玉、34龍、迄。
最後は少し非限定がありはっきりしない印象を与えたかもしれないが、設定となる打歩詰の舞台をそのまま用いた予定調和的な収束で個人的にはむしろ好印象。勿論非限定についてはない方が望ましいが、最善の纏めと言えるだろう。
総手数25手。非常に高密度な応酬で、手数を数えてその短さに驚いた人もいたのではないだろうか。
さて、本作は「連続不利打診合」という超ウルトラCを、非常にコンパクトな構図で実現している。
しかしそれだけに、73香合を打診合であると主張できる十分な論拠がないことが惜しまれる。これだけ構図的な余力の残しているのだから、この作者ならばそこに誰もが納得できるだけの論拠を与えることができたはずだ。
正直に言って、私は73香合は打診合ではないと思う。なぜなら73香合は成生の態度決定を迫れていないから(同角生と態度を保留できてしまっているから)だ。(反論はむしろ歓迎する。)
しかしそれでも私が本作を名作だと言うのは、作者としては不本意かもしれないが、本作を「打診不利合」を表現した作品として見たとき、それが非常に美しく表現されているからである。
「打診不利合」の作品として見たとき、本作は一号局とは比べものにならない美しさを誇っている。
まずは64香合の打診合としての意味がより見た目に顕在化していること。ここは感覚論だが、一号局の84銀合は角をダブらせる意味に
見えて
しまった。対して本作の64香合は打診合に
見えた
のである。
次に収束。上でも言ったように、打歩詰の舞台をそのまま使っての収束は非限定こそあれ簡潔だ。構想が終わったらすぐに終わるというのは構想作の収束として理想的である。
そして何より構図。これについては作者の言葉を引用しよう。
相馬慎一(作者)「打診不利連合。去年の打診不利合作の時点ではグループ不利合に気付いていませんでしたが、今回、その概念(香+馬)を右下の部分で使うことでエレガントな表現になっていると思います。」
実は一号局では、打診合の意味づけとなる打歩詰と、不利合の意味づけとなる打歩詰は別地点で設定されていた。(前者が35、後者が36。詳しくは
81puzzler
で。)
しかし本作では、27香+28馬が揃ってはじめて打歩詰になるというグループ不利合を応用した発想によって、不利合と打診合の意味づけとなる打歩詰を統一したのである。
このことは不利合と打診合とをより有機的に結びつけ、「打診不利合」を「打診+不利合」から「打診×不利合」へと進化させたと言っても過言ではない。
作者がエレガントな表現と言うのも納得だ。
「打診不利合」なんていうそもそも矛盾した構想を、これだけエレガントに表現されれば参ったと言う他ない。本作は間違いなく名作である。
しかし前述のとおり「打診不利連合」という構想の表現としては不満の残るところ。
そういうわけで、次は「打診不利連合」をエレガントに表現した名作を期待したい。作者ならばきっと実現してくれると信じて……。
冬眠蛙
「34龍まで25手で合ってますでしょうか。
香先香歩を予防する玉方香先香歩と打診不利合ですね。構図がシンプルでわかりやすく、構想がストレートに伝わるので、確かに前作よりも良いと思います。」
流石正解です。
香先香歩を予防、というよりは歩先香歩の予防になるでしょうか。まあ形式がどうあれ攻方にとっての不利感を感じて頂けたのであれば成功と言うことでしょう。
構想がストレートに伝わって前作より良いというのは同感。これぞ「打診不利合」でしょう。
ただ、作者の意図した構想については伝わらなかったみたい?
凡骨生
「34龍まで25手。
打診不利連合になるのでしょうか。
こんな夢のような構想が成立しているとは脱帽です。」
こちらも正解!
構想も大正解で、お見事です。
作者の意図がきっちり伝わっている人もいるということは、73香合がどう見えるかには個人差があるのかもしれません。
奥鳥羽生
「34龍迄25手。
作者が意識的にそう創ったと考えるのだが、まさに原理図といってもいいような、
表面上はこうも簡単に創るか!という印象の、スッキリ・クッキリの図。
以前に他ブログでもコメントしたことだが、氏の復帰後の一連の作品群について、
適切な表現ではないだろうが、「構想の条件作」という一面をひしひしと感じる。
(高難度条件を設定した構想の実現を自身に課す(ご本人は好きなだけw)の意)
①主題クッキリ
連続角生に対する連続打診不利中合。
両角・成生選択可能なので73香合は打診?、というところは私にはわからないが、
香香の連続不利中合が、明確に表現されている。
②構成スッキリ
二度の中合位置を限定し、本手順・変化・紛れすべてを含有した簡潔な全体配置、
解くことが煩わしくない親切設計、余分なものは何もない。」
うーん。私が言いたいことをこの文字数で全部言われてしまった感じ(笑)
唯一「構想の条件作」云々のあたりが私には理解できていないのですが、これは私の感受性の問題でしょう。
それにしてもスッキリ・クッキリとできていてこう作るものかと思わされます。
特に感心させられたのは「打診不利連合」を作ろうとしたときにその不利連合の部分の意味づけとして若島理論をあてはめたことで、恐らくこれが最適解。
相馬氏には構想を実現する上でどうするのが最善かというのが常に見えているのかもしれません。
ひっぽ
「82角生と成生を保留する→73角右生と成生を保留する→64香の打診で成を強要→馬を捨てて角生(初手の保留の効果)、という構成。
保留が入れ子になっていること、合駒、特に64の打診合駒が香合であること、この2点が目を引く。
打診不利合の実装法としては、双玉の利用で前作よりは格段にエレガント。
そのしわ寄せというべきか、収束の尾岐れは残念。このスキームでないとテーマが実装できなかったのならやむを得ないか。 」
打診不利合の実装法として前作より格段にエレガント、まさしくそう思います。
保留の入れ子は特に82角生の潜伏が長いので個人的には強烈な印象を受けました。なんとなく生にしてしまうところではあるのですが、それでも。
収束はやっぱり気になる人には気になりますよね。私も時期が変われば見方が変わるかもしれません。でも多分作者は全然気にしていないんじゃないかなあと思います。いつものことですが(笑)
divD
「3四龍迄25手。
角の配置が不成を暗示しているがとりあえず成で考えてみる。…73香合と53香合で打歩詰。82角不成から同角右成でも同じ。
では82角成から同角不成だと64香…これは同角成しかない。そして26香では同じなので71馬だと…53香合同馬同飛で逆王手。
やはり二枚とも不成が正解のようだ。
焦点の不利合駒と打診の不利合駒の連続不利中合。素晴らしいです。」
解説のような読みで、作家としては理想的な解答者さん。
でも73香合は焦点の合駒に見えたようなので、そこだけ作者的には不満?(笑)
ところで失礼ながら一つだけ揚げ足を取らせて下さい。73香、同角生、64香、同角成~71馬に53香合は……5枚目です><
彼方
「34龍迄25手。
6手目の局面がポイントで、持駒が香歩、歩歩だと簡単に詰むが香香だと17歩が打歩詰になってしまう。そこで合駒は73香合~64香合。グループ不利合を連合で実現するとは。
64中合は角の成生決定と93飛の利きを通す意味があるわけですね。(あってます?)
締切り過ぎてすみません。」
半ば固有名詞化した「グループ不利合」とは原理的に異なるのですが、これも形式的にはグループ不利合と呼べそうですよね。ただ混乱するので若島さんには別の名前を用意して欲しいかも。
64香合の意味はその通りなのですが、実は93飛の利きを通す意味は本質的ではない、ということを解説に書いたので読んでみて下さい。
三輪勝昭
「☆82角生、73香合、同角右生、64香合、同角成~34龍迄25手詰。
初手は82角しかないようで親切設計。親切設計とは詰方の手が限られていると言う意味ですが、これは僕の場合は褒め言葉です(笑)。
成不成の二択ですが、ここは不成に決定出来ます。
ここで非限定は作家としてあり得ないとしたら、馬に限定するには次に作意か変化で縦か横に動かなくてはいけない。
この可能性は想定出来ない形。玉に取られないようにするためもあるが、それはもっとあり得ない。
論理的にも馬である必要がなければ角にして成不成の選択権を残しておいた方が得。
屁理屈だけど正論。
ケチを付けるために言っているのではなく、これで何故だろうとの楽しみが出来、倒叙物推理小説のような楽しみがある。
2手目は73合しかなく、見た瞬間は73飛の移動合かと思ったら飛金銀は簡単に詰む。
角桂合は売り切れ(僕には親切設計)だから香か歩合に決まる。
これで犯人が分かりました。
推理小説でよくあるが、小説の面白さを考えたら犯人はこれしかないと言うのがあったりする。
その犯人は被害者が死んで一番損をする。変に犯人当より、その謎が解き明かされるのが楽しい推理小説もある。
香合だと犯人は分かってもその謎が解き明かされるのが楽しみになって来た。
しかし、読みは歩合から。
同角右生、26玉に71角から合駒をもらう。
以下27歩、16玉、17歩、同玉、28角成、16玉で一つの謎が解明。27香なら打歩詰。
17に打つ駒は関係なく27が問題。歩を渡してしまうと27歩なので香香と渡さなくてはならない。
73香合~71角、53香合では角生の必要がない。第一この程度で満足する作者ではない。
さらに考え64香合、同角成として飛を53に利かせて53桂移動合の逃れがありそう。
27同玉に28角成が出来ないと詰まないので成を強要されるので、馬を捨て28生角にする。
これで謎は解明された。後は証拠探しだ。
28角生以降は非限定続出でしょうか?
僕は収束最重視作家ですが、収束手順はそんなに重視してません。
一番重要視しているのは詰上がりの駒の働きです。
かなり不満の残る最終形です。
33成桂・43龍は23と・34と(成桂)にしたい。
と思って柿木将棋にかけると桂は売り切れにしても「詰みませんでした」と言って来る。
詰むと思うけど何か逃れる順を見落としているのだろうか?
その図は詰むとしても歩合で一旦25玉に逃げる手が変同でしょうね。
初めはそうしたかったけど33と43龍は苦心の配置かも知れない。
☆まとめると不利合駒は連続合で、このくらいが一番僕は好きです。
そして多種より同一駒の連続の方が好きです。
大変楽しめました。
だけど一つ不満が。
64合は飛を53に利かせて桂を合駒に参加させようとする手です。
しかし、打診中合の意味もある。
出来れば打診中合で創って欲しかった。
持駒1枚では詰まない。3枚になると不利合駒が成立しない。
うーん、至難かな。
もしかしたら次の作品で考えているのかも知れない。
又は3重不利合を考えてたりして。
僕の私見だけど1重増やすごとに倍難しくなるのではない。何乗倍に難しくなって行く。
以前、このサイトで玉方飛の横移動の回数を増やそうとしたバカな人がいたけど、作家とはそう言う性があり4重不利中合を創って欲しい気がしたりもします。
他人事なので好き勝手言えます(笑)。」
私も同じような解き方をしましたが、64香合は打診合の意味で発見したので、64香合の意味づけに対する不満はありませんでした。
案外64合の方も打診合に見える人と見えない人がいるのかもしれません。ただ、これ以上理想的な表現はありえないかも……。
33成桂・43龍を23と・34成桂にしても詰んでいるような気がします(うちの柿木将棋も詰まないと答えるのですが……)が、仰るとおり香香合が歩歩合でも27歩に25玉とよろけて同手数になってしまうので43龍になっているのだと思われます。
真に純粋な打診不利合駒は完全に矛盾してしまうので、その矛盾を解消するこの±ゼロの仕組みは個人的には凄いと思わされるところ。しかし仰る気持ちもわかるので複雑なところです。
私は回数を増やすことに余り本質的な意味はないと思いますが、とはいえ増やせるのなら増やしたい。結局、何回にするのが理想的な表現になるか、というところに行き着きます。バランスを損ねてまで回数を増やすのは好みではありません。
ただ一方で、趣向作などでは回数が重要な要素として捉えられているようにも思いますし、回数を増やすことにどの程度の価値を見出すかは人それぞれとしか言えないところでしょうね。
高坂研
「82角生、73香、同角右生、64香、同角成、26玉、27香、16玉、17香、
同玉、28馬、16玉、17馬、同玉、28角生、27玉、73角成、16玉、
17歩、同玉、28馬、16玉、27馬、25玉、34龍迄25手詰。
4手目64香が「不利合駒+打診中合」の一手。玉方香香合によって打歩詰に
誘導するのは作者が最近多用している筋なのですぐ分かったが、4手目単に
26玉として71角成、53香、同馬とするより、64香として成を強制する方が2手
伸びるのは何とも不思議だ。
ただ、収束はもう少しどうにかならなかったのか、こういう露骨な方法でしか
桂合を処理できなかったのか、或いは16手目の非限定など、完成度という点
では若干の疑問も残る。(恐らく作者は気にしていないだろうが)今まで彼が
保っていた良質のバランス感覚をかなぐり捨ててまで「まず構想ありき」という
創作姿勢に固執する作者に対し諸手を挙げて賛成しきれない私は、やはり
古い詰キストなのだろうか?
」
確かに64香と2手で香を渡すほうが、71馬から4手で香を貰うよりも長くなるのはパラドキシカルですね。この視点には気づきませんでした。鋭いですね。
完成度に対する厳しい見方は、氏が言えばこそ納得せざるをえません。構想作というのは幾分か無理をして手順を構成しているわけですが、とすると絶対的に理想的な詰将棋は構想作ではないのかもしれませんね。もっとも新構想が出尽くすまでは非常に魅力的な分野だと思いますし、相対的に理想的な詰将棋なら沢山あると思うからこそ構想作を作るわけですが。
相馬さんの作り方は昔と比べてかなり変わりましたよね。若島さんも同様に変わっていて、何か関係があるのかなとか思ったりしますが、真相は如何に。
それはそれとして、私は今の創作姿勢も好きです。何より創作意欲が刺激されますし。
でも諸手を挙げて賛成し切れないというのは多分みんななんじゃないでしょうか(笑)
YANAGI
「天空と地上を斜めに結ぶ角のラインが美しい。別々の詰将棋が同時進行しているような、不思議な感覚。構想部分の評価については、よく分からないのでパスします。」
別々の詰将棋が同時進行ですか……言われてみればそんな気もします。
なんとも独特の捉え方で、非常にらしい評ですね。
YANAGIさんの短評は個人的に凄く好きです。
他にも一人の方から解答を頂いたのですが、管理人にのみ公開の設定になっていたので短評を掲載していいのかわからず、とりあえず伏せてあります。もし掲載可ということであれば連絡頂ければ幸いです。
正解者(敬称略、順不同)
三輪勝昭、冬眠蛙、凡骨生、奥鳥羽生、ひっぽ、divD、高坂研、彼方、YANAGI、Pathfinder
非常に多数の解答ありがとうございました。
次回も予定しておりますのでよろしくお願いします。
追記
「1枚でも安い駒を渡すと攻方に都合のいいタイミングでそれを使われてしまうので、複数回の合駒を全て不利合駒で受けて安い駒を渡さないようにする」という意味の不利合駒は、少なくとももっと以前に前例があるようである。
その内図面を得られたのが次の志駒屋十政「沈香」(めいと16号 1994.4 37手詰/余詰)
初手18飛に28香~48香合まで4連続不利合!
以下78馬~38馬、17玉に
18香
、26玉、
27香
、36玉、
37香
、45玉、56馬、44玉、
45香
、53玉、と追ったときに45香の形であれば93飛成、同と、54歩が打歩詰なのだが、1枚でも歩を渡すと最後まで温存されて45歩と打たれてしまうので香以外を渡せないというわけだ。
ちなみに作意は56馬のところ57桂とゆるめ、44玉、45香、53玉、93飛成、同と、43香成、同玉、42角成、44玉、45歩、55玉、56馬、迄。
余詰順は恐らく27香のところで15角成~25馬とする順。
正直余り美しい表現とは思えない……のですが先例は先例なので、敬意を払って紹介させて頂きます。
さらに追記。
若島氏よりこれが一号局ではないかと教示頂きました。
近代将棋 1969年1月(『恋唄』92番)
69手目に12歩と打つと、作意同様に進んで78手目41香合と受けられ(これが選択不可の不利合)、83手目から
73香
、83玉、
84香
、93玉、97香、同銀成、で94歩が打歩詰。もし41香合が歩合なら73香~84歩と打てることに注目してください。
そこでこれを避けるために69手目は12香と香先香歩。これなら78手目41香合と受けられても83手目から
73香
、83玉、
84歩
として、93玉、97香、同銀成、94歩と打てるというわけです。
前半は趣向作、後半は構想作みたいなちょっと分裂気味な構成で、今の作者ならば別の作り方をしたのではないでしょうか。
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[ 2014/08/30 21:00 ]
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