千年回廊 作43角、
イ 63玉、52角成、
ロ 同玉、41角、61玉、62金、同玉、12飛生、52桂合、同角成、73玉、74金、82玉、53馬、72桂合、64馬、93玉、75馬、82玉、83歩、同桂、73金、同玉、85桂、63玉、13飛生、54玉、53飛生、45玉、46歩、44玉、35と、同玉、33飛成、34桂合、53馬、25玉、26馬、同桂、36銀迄41手。
イ 64玉は65金、73玉、64角、83玉、61角成、84玉(72合は同馬、同玉、12飛成以下)、75角、73玉、53飛成以下早い。
イ 55玉は65金、56玉、16飛成、57玉、66龍、58玉、67角、69玉、79金、59玉、57龍、58飛合、48銀、49玉、58角、38玉、39飛、28玉、17龍迄早い。
ロ 72玉は61角、73玉、74金、82玉、83金、同桂、同角成、同玉、95桂、82玉、83金、91玉、11飛成、81合、同龍、同玉、63馬以下早い。
評価数 13 誤無解・無評価 6+1
評点
4.54 [2 7 1 2 1 0]
順位
2位
大トリを飾るのは千年回廊氏。
最近は本誌の短編コンクールでも優勝され、ますます期待がかかる次世代のエースです。(優勝おめでとうございます。)
本作も氏の実力が遺憾なく発揮された好作で、課題上の不利にもかかわらず2位となりました。
初形から玉が広く、序は少し厄介です。
でも滅茶苦茶に紛れているというわけではないので、
イや
ロに示したような変化を丹念に読んでいけば、そのうち正解に辿りつけるはず。
それほど煩雑でもないかと思います。
41角を据えてからが本番です。
61玉に62金を捨てて12飛成。え?作意は生だって?いやこういうのはとりあえず成っておくのがお約束。
対して52に捨合をするのは必須ですが、香と桂のどちらを合駒するか。
香合には同角成、73玉、74金、82玉に61馬と入るのが俗ながら好手となります。91玉に92香と打てるため、以下3手詰。
桂合のときは同様に61馬とすると、91玉に対して手がありません。
そこで今度は53馬とじっと引くのが妙に味のある手。91玉に対して64馬を用意しています。
ここの合駒も少し考えさせられます。
まず香合。これは同龍~73香と打ち、以下71桂を取って詰みます。
次に銀合。このときは一旦94桂~92歩、81玉と形を決めてから72龍が好手順で、以下簡単です。
というわけでやはりここも桂合が正解でした。
桂合にこれを取る筋では駒が足りないので、64馬と攻めます。
64馬、93玉に75馬は歩を補充して自然な一手ですが、対する84合が気になるところ。
84合には94歩と叩くのが好手で、同玉には84金、同桂、92龍、93合、86桂、95玉、93龍で、また92玉には72龍、82香合、93歩成、同玉、84金、同香、85桂、94玉、92龍でそれぞれ詰むのですが、敢えて上部に呼んで詰ますとは意外性のある変化手順です。
合駒が利かず82玉と下がる玉に、83歩~73金が駒を最大限に活かした踏み込み。
玉を73に呼んで85桂を据えれば、もう82には逃げられません。仕方なく63玉、さらに13龍に54玉と、はじめいた場所に戻っていきます。
そして53龍、45玉となった局面が問題の局面。

見ての通りの打歩詰。でもここで53龍が生飛車だったら……。
そうです、20手以上前に指した12飛成、今ようやくあの飛車を成ってはいけなかったことが判明するのです。
不成の構造自体はありふれたものですが、潜伏期間の長い伏線的な表現が素晴らしいですね。
53龍を裏返せば、46歩が打てます。
46歩、44玉、35と、33飛成に3度目の桂合が出て、53馬、25玉、26馬、同桂、36銀迄。
馬を捨ててスッキリとした詰上りとなります。
伏線的な飛生を軸に、好手を散りばめて纏められた好中編。
何より感心させられるのは、繋ぎの手順を成立させるための駒の少なさです。
左辺の手順は53歩、71桂、75歩のたった3枚によって支えられており、しかもそれらは最大限に活用されます。
例えば歩は合駒制限に働いた後、攻方に取って使われます。二歩禁のための歩配置は普通嫌われますが、このように多段活用されることでその嫌味がなくなり、むしろ効率的な配置に感じられるようになっているのです。
そして結果としてこれだけの駒数でこれほど濃密な手順を緩みなく紡いでいる。今後もこの作者に注目せずにはいられませんね!
tsumegaeru:
全面的に柿木解答です。この飛不成は凄い。飛車不成の効果が、玉が左へ移動してさらに大きく右へ移動してからと、心理的に大きな時間差があるので、不成の演出として素晴らしい。わざとらしい配置もなく自然と玉が移動しているように見えるのもいい。収束も決まっている。
鈴川優希:
逆算の技術がすごい。桂合ばかりで統一感あり。tsumegaeruさん?鈴川氏をして逆算の技術がすごいと言わしめるとは。
作者当てははずれですが、tsumegaeruさんも上のように絶賛。
黄楊の輝き:
巧い伏線、その他も緩みない手順、何という完成度の高さ。文句なしの優勝でしょう。
divD:
潜伏期間の長い飛不成。合駒は桂で統一していて凄い。
たちおか:
主眼の不成だけでなく様々な技巧で装飾されていて、何度も盤に並べたくなります。
ゆーてん:
最後まで飛車が我慢して我慢して…というストーリー、超カッコよかったです!
そてつ:
飛不成から収束馬まで消して贅沢。
VAN:
難解だが収束まで隙のない好作。
河童生:
飛角(馬)のコンビで王を追い回す。途中、9手目に伏線の飛生が入って、
作者は大満足。3度の桂合、特に52桂の捨合は面白い好手です。
名無し名人:
評価に悩む作品。手順自体は飛生や捨合が入り収束も決まって良いのだが、広すぎというか、玉が動きすぎというか。divDさんかVANさんの二択で悩むが、VANさんと予想。最後のVANさん(晩餐)ということで(笑)最後の晩餐www
それはそうと、舞台が動くのは一般に嫌われる傾向があり(狭い舞台で終始する方が、エコノミックなため?)、その点で評価を落とした人も。ただ意図的な設定ではない(各所に駒を配しているわけではない)ので、本作の場合そこまで気にすることなのかはわかりません。
まあかく言う私も気にならなかったというわけではないので、それを気にするのは詰棋病みたいなものなのかも(笑)
オオサキ:
悪い意味で盤を広く使っている。こう言いながら5点をつけているのはツンデレ?
ぬ:
3回の飛不成がどうでもよくなるくらい難しい。難解さに言及した評。
「易しいことが評価を下げることには繋がらない」とする最近の傾向を是とするなら、難解であることもまた評価を下げることには繋がらないというのが持論です。
が、難解さと隣り合わせになりやすい煩雑さは困りモノ。人によって序がちょっと煩雑に感じられるかもしれませんね。
三輪勝昭:
うちの柿木は解いて来ない。
難しいのはTwitter選手権には向かないと思うけど。ナルホド。
大学に貰うのが正着でしたか。
桃燈:
3度の飛不成はなかなかだが、手数的に間延び感があるか。
手数が伸びたことを伏線的演出と捉えるか、テーマに対する間延びと捉えるか。
序から飛生が挿入されていればこそ、私は前者の立場でした。
これにてTwitter詰将棋選手権の解説は一旦終了です。(関連記事はあるかもしれませんが)
作品を提供して下さった方、解答を寄せて下さった方、そしてここまで読んで下さった方、ありがとうございました。
そして長らくお待たせしてしまったこと、申し訳ありませんでした。
Twitter詰将棋選手権、これにて閉幕。